忘れ得ぬ戦士たち

(3) 高山将孝(ピストン堀口)

大人の風格漂う超技巧派

 生年月日  1947・10・30
 出身地  東京都
 プロデビュー  1968・03・20
 ウェイト  ライト級
 主要タイトル  日本ライト級(2度獲得)
 タイプ  右ボクサーファイター
 終身戦績  29戦22勝(8KO)6敗1分
 主武器  左ジャブ,フック,右ストレート,左ボディブロー


 高山将孝は長い歴史を誇る日本ライト級でも屈指の名チャンピオンと言えます。
 野口ジムが主宰していた”ベビーボクシング教室”で小学生の頃からボクシングを学びました。当時のジムメイトにはイーグル佐藤,西城正三など,後にプロでチャンピオンになる小学生が名を連ねていました。高山はその後,中央商から早大に進学し,東京オリンピックの代表にもなっています。文字どおり押しも押されもしないトップアマとして,エリートコースを歩みました。
 早大ボクシング部の先輩である堤五郎氏がマネジャーをしていたピストン堀口ジムから鳴り物入りでプロ入りしました。デビュー戦は68年3月,中川昭二(船橋)との6回戦に判定勝ちです。高山と早大の同級生で,フジテレビのアナウンサーになった松倉悦郎氏が初期の試合の実況を担当したこともあります。高山も松倉アナも『これはさすがにやりにくかった』とこぼしていました。そんなエピソードを残しながらプロの道を歩き始めた高山ですが,初期の頃はアマチュア臭さが抜け切れません。一流のテクニックを持ちながら消極的なボクシングが災いして,見ている者にフラストレーションをもたらす試合が目立ちました。
 70年1月には大阪でクセ者・辻本英守(大星)から判定勝ちで日本ライト級王座を奪います。余談ですが,初防衛戦でグラブを交えた林一道(金子)は引退後にカメラマン,ジャーナリストとして活躍している人です。ジョー小泉さんとも親交が深いようで,”ボクシングマガジン”や”Number”には欠かせない存在ですね。WOWOWを見ていると,今でも本場のリングサイドでカメラを構えている姿が確認でき,非常に懐かしいです。

 さて,本題の高山の話に戻りましょうか。71年3月,鈴木石松(ヨネクラ=のちのガッツ石松)とはドローになりましたが,渡辺昌龍(船橋)を6回KOに屠った頃からプロらしさが出て来ました。渡辺は現・ドラゴン船橋ジムの会長です。
 高山はその直後に海外遠征に出ます。ルーベン・ナバロ(米国),ジミー・ロバートソン(米国),チャンゴ・カルモナ(メキシコ)らに敗れましたが,世界的強豪との対戦で揉まれたことにより,たくましさが出て,ようやく本領を発揮しました。帰国後はアマチュア臭さが抜け,すっかりプロのファイターに変貌を遂げていました。もともとテクニックは一流でしたが,パワーが身に付き,積極性が出て,倒すコツを掴んだことが飛躍の原動力になったものと思います。
 73年7月にはバズソー山辺(船橋)に不覚を取って王座を譲りましたが,74年2月の再戦では見事な執念を見せ,8回KOで山辺に雪辱を果たし,王座を奪回しました。このリターン・マッチは高山にとって生涯最高の傑作と言えます。
 その余勢を駆って74年12月,はるばるコスタリカに乗り込み,果敢にもあのロベルト・デュラン(パナマ)のWBA世界ライト級王座に挑みました。進境著しい高山のテクニックに期待がかかりましたが,開始早々からデュランに圧倒され,3度倒されて万事休す。初回わずか1分40秒・・・・・世界戦における日本人の最短KO負けという不名誉な記録を残してしまいました。
 75年5月,矢島康士(セキ)に判定勝ちで日本タイトルの2度目の防衛に成功した試合のリング上から引退を表明しました。妻子を矢島戦の会場に呼び,これが最後と決めた覚悟のラストファイトでしたね。

 22勝中8KO勝ちの記録が示すように,終身KO率は高くないですが,ほとんどのKO勝ちがキャリア後半に集中していることが特筆すべき点です。左を主体に試合を組み立て,長いアマ仕込みで身に付けたテクニックに裏打ちされたボクシングはまさに大人の風格そのもの。ボディ打ちも身に付け,晩年の充実した試合内容は実に見事なものでした。ただし,実力のピークに世界挑戦のチャンスを迎えたことは幸運でしたが,全盛時のデュランを相手にしなければならなかったのが不運と言えます。
 引退後はテレビ版”あしたのジョー2”(日本テレビ系)のテクニカルアドバイザーを担当して話題になりました。現在は神奈川県厚木市のT&Tジムの会長として後進の指導に当たっています。後楽園ホールのリングでエプロンに立ち,温厚な目で噛んで含めるように指示を与えている姿が印象的です。”高山二世”の出現に期待したいところです。
 高山に関しては,出回っているビデオがデュランに打ちまくられている試合だけというのが私には不満です。晩年の円熟したボクシングを若いファンにも見て欲しいし,現役選手には最高の教材になるはずです。


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