ボクシングのルール


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 ルールを理解してボクシングを観戦するのと知らずに観戦するのでは,楽しみの度合いに格段の差が生じます。ボクシングを楽しむにはテクニックが必要です。楽しむためのテクニックを身につければ,ボクシングはあなたを十分に楽しませてくれます。その最大のテクニックがルールを知ることです。ルールを熟知し,ルールが生まれた背景を理解することにより,あなたのボクシングライフはより一層豊かさを増すでしょう。
 しかし,ルールブックを手に入れて自分で勉強するのはたいへんです。そこで,日本ボクシングコミッション(JBC)のルールブックをもとに,プロボクシングのルールをわかりやすく紐解いてみることにします。
 ルールブックの記載順ではなく,あくまで”知りたい順”でアップしていきます。したがって,話が前後することもありますが,御了解ください。
 これをスラスラと説明できれば,リングはあなたのもの。そこまで突っ込めば”ボクシング観戦の達人”です。


       
参考文献 ・・・ PROFESSIONAL BOXING RULES 2004 (JAPAN BOXING COMMISSION)

        ※ 訂正・追記やルール改訂などのために,予告なく内容を変更することがあります。予めご了承ください。

内容 更新日
第1章  どうやって採点するの? 2005.07.10
第2章  KOとTKO・・・どこが違うんだろう 2005.07.10
第3章  負傷判定って何? 2005.07.17
第4章  クラスとウェイト 2009.03.21



第1章 どうやって採点するの?

 ボクシングの試合の勝敗は次の6種類によって決められます。
     @デシジョン(判定)
     Aドロー(引き分け)
     Bノックアウト(KO)
     Cテクニカル・ノックアウト(TKO)
     Dファウル(反則失格)
     Eノー・コンテスト(無効試合)
 第1章はデシジョン(判定)から説明することにします。判定の決定方法には表1の3種類があります。B・Cは別途説明するとして,まず上記の@から入りましょう。
採点は表2に示す4項目を基準に評価されます。

表1. デシジョン(判定)の分類(第80条1項)
@  ラストラウンドの終了後,審判員の採点結果(第77条)によって勝敗が決定した場合。
A  偶然のバッティングによる負傷で続行不可能となり,試合の後半(10回戦以上は5ラウンド以降)で採点により勝敗が決定された場合。    テクニカルデシジョン(TD)=負傷判定。
B  試合開始後,ボクサーに関係なくして,予測できない事項で予定された試合が最後まで行われなくなり,それまでの採点で勝敗が決定された場合(この場合,Aが準用される)。

表2. 評価の基準(第78条1〜4項)
評価項目 考え方
@  クリーン・エフェクティブ・ヒット
  (Clean Effective Hit)
 正しいナックルパートによる的確にして有効なる加撃。有効であるかないかは主として相手に与えたダメージに基づいて判定される。
A  アグレッシブ
  (Aggressive)
 攻撃的であること。ただし,加撃を伴わない単なる乱暴な突進は攻撃とは認められない。
B  ディフェンス
  (Defense)
 巧みに相手の攻撃を無効ならしめるような防御。ただし攻撃と結びつかない単なる防御のための防御は採点されない。
C  リング・ジェネラルシップ
  (Ring Generalship)
 試合態度が堂々としてかつスポーツマンライクであり,戦術・戦法的に優れ,巧みな試合運びによって相手を自己のペースに持っていくこと。


表3. 採点の基準(第79条1〜4項)
採点 第79条の規定 補足説明(by MAOMIE)
10−10  互角の場合  表2の基準に照らしても差が見出せない場合
10−9  若干の勝ちの場合  明らかな差あるいは表1に照らして微妙な差が見出せる場合
10−8  ノックダウンまたはこれに伴う明らかな勝ちの場合  1度のダウンがあった場合あるいはそれに匹敵する明白な差が生じた場合
10−7  相手が全くグロッギーでノックアウト寸前の圧倒的な勝ちの場合  2度のダウンがあった場合あるいはそれに匹敵する明白な差が生じた場合
 ※ 10−6はつけず,この場合は当然TKOである。
   採点はKO,TKOで試合が停止される場合を除き,試合が停止されたラウンドも採点される(テクニカル・デシジョンのケース)。

 JBCルールでは,表2に示す評価のポイントをベースとして,表3の基準で採点することになっています。各ラウンドは独立したものと考え,前のラウンドにおける採点結果とは一線を引くことが重要です。つまり前のラウンドやそこまでの試合内容に左右されずに採点することが重要というわけです。
 過去には5点法が採用され,微差は5−4としない傾向がありました。実際に15ラウンドの世界戦で74−73などという採点結果もありました。しかし,最近は世界的な採点の傾向を取り入れているためか,表2の@〜Cの優先順位により,できるだけ差をつける傾向があります。10−10とすべきか10−9とすべきか判断に迷う場合も多いです。そのような場合でも表2の優先順位に照らし,1ラウンド3分間のうちの2分間を支配していた選手に10−9でリードを与えるように採点することが必要です。
 このサイトの熱戦譜に掲載する試合は,すべて公式採点の結果に添えて私自身の採点結果を併記しています。私は10−10のイーブンとするラウンドができるだけ全体の3割以内に収まるように心がけています。10回戦ならば7〜8ラウンドで10−9という差がつくような採点ができていれば良い採点ができたという感触が持てます。
 しかし,どんな採点方法にもメリットとデメリットの両方があります。現在の採点方法のメリットとしては,微差を取られるので両選手が積極的な試合運びをして試合が活発になるという点が考えられます(実際にそうなっているかどうかは別として・・・)。消極的な試合運びは損になります。その一方で微差の積み重ねによって大差がついてしまうことがあり,試合全体の印象と採点結果との乖離あるいは審判員相互の採点結果に乖離が生じやすいという弊害が挙げられます。
 最近は過去の試合のビデオが豊富に出回っています。ビデオを見ながら現在の採点基準で採点し,当時の5点法での採点結果と比較・考察してみるのも面白いでしょう。当時は微妙な判定で物議を醸した試合が,現在の採点方法では明白に差がついたということも多いかも知れません。
 ただ単に熱狂して興奮するだけではボクシング観戦の楽しみの10分の1にも届きません。あなたも審判員になった気分でぜひ一度採点しながら観戦してみてください。


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第2章 KOとTKO・・・どこが違うんだろう

 知っているようで意外に知らないのがKOとTKOの区別ではないでしょうか。あらためて定義を問われると困ってしまいます。さすがにリングアナウンサーは間違えませんが,テレビでは間違えて伝えられていることがよくあります。
 以下のようにまとめましたので,しっかり理解してボクシングを楽しみましょう。

表1. KO(ノックアウト)とTKO(テクニカルノックアウト)の違い
分  類 定  義 関連ルール
K O @  ダウンして10秒以内に試合を続行できない場合。  第80条3項のイ
A  ラウンド開始後10秒を経過しても試合をしない場合。
B  1ラウンド中に有効打による3度のダウンがあった場合(4回戦は2度)。
C  有効打によりリングよりフロアに落ち20秒以内に戻れない場合。
D  有効打によるダウンで,レフェリーがカウント中セコンドがタオルを投入した場合。  
TKO E  有効打による負傷のため,これ以上試合続行は不適当とレフェリーが判断した場合。  第80条4項のイ
F  実力に格段の差があって一方のボクサーが甚だしくダメージを蒙って試合を停止した場合。
G  ラウンド進行中チーフセコンドがタオルを投入し,もしくはラウンドとラウンドの間に棄権を申し出て,レフェリーがこれを認めた場合。
H  ドクターが医学的見地から試合停止をレフェリーに勧告した場合。
I  反則を犯したボクサーが負傷し,試合が停止となった場合。
J  ダウンの際のカウントの途中でレフェリーが試合を停止した場合。 東京地区試合役員会
(2005.6.10)申合せ事項

 大雑把な概念ですが,『カウントアウトあるいはそれに準ずる場合はKO,それ以外はTKO』という判断基準で覚えれば良いと思います。
 『カウントアウトに準ずる場合』というのはA〜Dです。混同しやすいのは,タオルが投入された場合やカウントの途中で試合が停止された場合ですね。その場合の処置をよく理解しましょう。特にDとJを良く比較してみてください。違いは微妙なので,要注意です。
 これは私の解釈ですが,Dは『タオルが投入されなければ当然カウントアウトされていた状況=レフェリーはカウント途中では停止する意思がなかった=カウントアウトに準ずる場合』との解釈によってKOに分類されているものと考えられます。
 一方,Jは一度はダウンを取ってカウントを開始したものの,やはり無理と判断して試合を停止したケースですから,Fに準ずる場合と考えることができます。したがって,TKOに分類されているものと考えられます。これは2004年版のJBCルールブックには規定されていませんが,KOとTKOの区別を明確化するために申し合わせが行われており,次回のルールブック更新時に追記されるものと思います。

 Gではタオルの投入によって棄権の意思表示をすることはできますが,それでもレフェリーは試合続行を命じることができます。また,試合中セコンドがリング内に入ることは許されませんが,タオル投入と同時にチーフセコンドはリング内に入ることが許されます(第69条5項)。これ以上は危険との判断でセコンドがタオルを投入しても,レフェリーの死角に入って気がつかない場合もあります。したがって,セコンドがタオルを投入した時点でリング内に入れるようになっています。

 Cはプロレスのリングアウトのような感じですが,第83条15項に次のような記述があります。『試合中ボクサーが有効打によりリングの外に落ちた場合は,もしそのボクサーが自力でリングに戻らない場合には,ノックダウンと同時に相手ボクサーを遠いニュートラルコーナーに退けさせてからカウントする』。

 ごくまれにダブルノックダウンというハプニングがあります。この場合は非常に複雑になりますから,下記のように整理してみました。
 ダブルノックアウトは国内では有名な中西清明(AO)vs.宮本昇(宮本)の8回戦(1951年2月)で発生した1例だけだと記憶しています。ダブルノックダウンには複数の事例がありますが,最近では竹原慎二(沖)vs,李成天(韓国)で争われた東洋太平洋ミドル級タイトルマッチ12回戦(1995年9月)が知られています。

表2. ダブルノックダウンとダブルノックアウト
想定されるケース 処 置 関連ルール
@  一方の選手だけが立ち上がれなかった場合 K O  第83条14項
A  両者ともにカウントテンで立ち上がれなかった場合 引き分け  第80条2項ハ,第83条14項
B  両者ともに3度目のダウン(4回戦は2度目)に該当し,両者ともに10秒以内に立ち上がった場合 引き分け  第80条2項ニ,第80条3項ハ,第83条14項
 ※ この場合,3度目のダウンでもレフェリーはカウントする。
C  一方の選手だけが3度目のダウン(4回戦は2度目)に該当し,かつ両者ともにカウント・テン前に立ち上がった場合。 K O  第80条3項ハ,第83条14項
 ※ この場合,3度目のダウンでもレフェリーはカウントする。
D  一方の選手だけが3度目のダウン(4回戦は2度目)に該当し,かつ3度目のダウン(4回戦は2度目)に該当する選手だけがカウント・テン前に立ち上がれなかった場合。 K O  第80条3項ハ,第83条14項
 ※ この場合,3度目のダウンでもレフェリーはカウントする。


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第3章 負傷判定って何?

 ボクシングにはケガがつきものです。特に目の周囲は皮膚が薄くて柔らかいので非常に切れやすく,試合続行不能となるケースも日常茶飯事です。ここでは頻発する負傷判定を中心に,アクシデント発生に対応するルールについてお話しましょう。

表1. 負傷での試合停止における処置
想定されるケース 処置 関連ルール
有効打による負傷  有効打による負傷で,これ以上試合続行は不適当とレフェリーが判断した場合。
  ※ 何ラウンドに停止したかを問わない。
            (by MAOMIE)
TKO 第80条4項イ
偶然のバッティングによる負傷  試合の前半で停止が発生した場合。
  (10回戦以上は4ラウンドまで)
引き分け
(テクニカル・ドロー) 
第77条,第79条
第80条2項ロ
第84条1〜4項
 試合の後半で停止が発生した場合。
  (10回戦以上は5ラウンド以降)
負傷判定
(テクニカル・デシジョン)
または
引き分け
(テクニカル・ドロー)
 試合が停止したラウンドを含む採点結果で勝敗を決定する。 第77条,第79条
第80条2項ホ
第84条2〜4項

 ボクシングを見ていると,目の上などをカットしてドクターチェックを受けるために試合が中断する場面がしばしば見られます。ここでのポイントは負傷が有効打によって発生したものか,それとも偶然のバッティングによって発生したものかという判断です。これによって処置が大きく分かれます。
 この場面ではレフェリーの動作に注目してください。リング下の各ジャッジとオフィシャル席に有効打によるものか,偶然のバッティングによるものかの判断結果を知らせているのが見られると思います。拳を一方の手のひらに当てれば有効打による負傷,手を自分の額に当てれば偶然のバッティングによる負傷であることを示しています。この判断結果はラウンド終了後にリングアナウンサーからも場内に知らされます。
 負傷が発生した場合の処置を表1に整理しました。偶然のバッティングによる負傷で注意しなければいけないのは,あくまで試合停止が発生した時点で処置が決まる点です。つまり試合の前半に発生した偶然のバッティングによる負傷で試合が続行され,そこに有効打を浴びているうちに悪化して後半に続行不能となった場合は引き分けではなく,試合が停止したラウンドを含む採点結果で勝敗を決定するということになります(引き分けもあります)。これは第84条3項に明記されています。

 ごくまれに,有効打と偶然のバッティングによる傷の両方を負ってしまうことがあります。この場合はどちらの傷が”致命傷”になったかによって大きく明暗が分かれます。
 その典型的なケースが2005年4月に行われたチャンピオン・本望信人(角海老宝石)vs.挑戦者・真鍋圭太(石川)の日本スーパーフェザー級タイトルマッチでした。この試合,4回に本望が左目上をカットします。これは真鍋の有効打によるものとの裁定でした。TKO負けを警戒した本望が勝負を急ぎ,強打の真鍋との間で息詰まるような熱戦が展開されましたが,10回,本望の左目上の傷が深くなり,続行不能との判断で最終回の土壇場に試合がストップされました。出血も相当な量でしたが,瞼の切れ端がブラついており,誰が見ても続行不能というひどい傷でした。
 ストップの瞬間,TKO勝ちでタイトル奪取だと思った真鍋陣営も応援団もリング上で大喜び。ところが,その直後のリングアナウンサーの説明で状況が一転。試合停止に直結した致命傷は4回の有効打によって負った傷とは別物で,10回に発生した偶然のバッティングによるものというレフェリーの裁定でした。偶然のバッティングによる試合停止なので当該の10回を含む採点集計に委ねられた結果,わずかに本望が上回り,真鍋は涙を飲みました。本望は紙一重のタイトル防衛,真鍋にとってはまさに悔やんでも悔やみきれない敗戦だったと思います。私はこの試合をリング下の最前列で観戦していましたが,狂喜から落胆に変わった真鍋の表情が忘れられません。
 こういうことがあるので,レフェリーはたいへんです。コミッション・ドクターとの連携を密にして,常に状況を客観的かつ公平に観察し,迅速に判断することが求められます。
 負傷判定に関するルールは一朝一夕でできあがったわけではなく,長い年月の間に幾度ものトラブルや悲劇を重ねながら工夫して熟成して行ったものです。だからこそ,ボクシングは筋書きのないドラマであるし,奥の深さがあるのです。


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第4章 クラスとウェイト

 柔道やレスリングのように体重別の階級制を敷いている競技は多いですが,その中で最も厳密に運用されているのはボクシングでしょう。ボクシングとウェイトは切っても切り離せないほど深い関係があります。
 表1および表2はプロボクシングのクラス別のウェイト制限を示しています。長い間に徐々に細分化され,現在では男女ともに17階級に分かれています。
 クラスが増える理由はいろいろあります。例えば1975年にジュニア・フライ級(現在のライトフライ級)が新設された当時は『体格的に劣るアジアや中南米の選手にチャンスを与えるため』という理由が挙げられていました。しかし,やはり興行面からのニーズが大きいようです。タイトルマッチと銘打った試合になれば,プロモーター(興行主)としては観客動員が容易になるからです。

表1. クラスとウェイト(男子)
クラス  ( )内は略号 ウェイト クラス  ( )内は略号 ウェイト
 ミニマム級(Mm)  105ポンド(47.62キロ)以下  ライト級(L)  130ポンドを超え,
     135ポンド(61.23キロ)まで
 ライト・フライ級(LF)  105ポンドを超え,
     108ポンド(48.97キロ)まで
 スーパー・ライト級(SL)  135ポンドを超え,
     140ポンド(63.50キロ)まで
 フライ級(F)  108ポンドを超え,
     112ポンド(50.80キロ)まで
 ウェルター級(W)  140ポンドを超え,
     147ポンド(66.68キロ)まで
 スーパー・フライ級(SF)  112ポンドを超え,
     115ポンド(52.16キロ)まで
 スーパー・ウェルター級(SW)  147ポンドを超え,
     154ポンド(69.85キロ)まで
 バンタム級(B)  115ポンドを超え,
     118ポンド(53.52キロ)まで
 ミドル級(M)  154ポンドを超え,
     160ポンド(72.57キロ)まで
 スーパー・バンタム級(SB)  118ポンドを超え,
     122ポンド(55.34キロ)まで
 スーパー・ミドル級(SM)  160ポンドを超え,
     168ポンド(76.20キロ)まで
 フェザー級(Fe)  122ポンドを超え,
     126ポンド(57.15キロ)まで
 ライト・ヘビー級(LH)  168ポンドを超え,
     175ポンド(79.38キロ)まで
 スーパー・フェザー級(SFe)  126ポンドを超え,
     130ポンド(58.97キロ)まで
 クルーザー級(C)  175ポンドを超え,
     200ポンド(90.72キロ)まで
         ヘビー級(H)  200ポンドを超え,無制限


表2. クラスとウェイト(女子)
クラス  ( )内は略号 ウェイト クラス  ( )内は略号 ウェイト
 アトム級(A)  102ポンド(46.26キロ)以下  ライト級(L)  130ポンドを超え,
     135ポンド(61.23キロ)まで
 ミニフライ級(MF)  102ポンドを超え,
     105ポンド(47.62キロ)まで
 スーパー・ライト級(SL)  135ポンドを超え,
     140ポンド(63.50キロ)まで
 ライト・フライ級(LF)  105ポンドを超え,
     108ポンド(48.97キロ)まで
 ウェルター級(W)  140ポンドを超え,
     147ポンド(66.68キロ)まで
 フライ級(F)  108ポンドを超え,
     112ポンド(50.80キロ)まで
 スーパー・ウェルター級(SW)  147ポンドを超え,
     154ポンド(69.85キロ)まで
 スーパー・フライ級(SF)  112ポンドを超え,
     115ポンド(52.16キロ)まで
 ミドル級(M)  154ポンドを超え,
     160ポンド(72.57キロ)まで
 バンタム級(B)  115ポンドを超え,
     118ポンド(53.52キロ)まで
 スーパー・ミドル級(SM)  160ポンドを超え,
     168ポンド(76.20キロ)まで
 スーパー・バンタム級(SB)  118ポンドを超え,
     122ポンド(55.34キロ)まで
 ライト・ヘビー級(LH)  168ポンドを超え,
     175ポンド(79.38キロ)まで
 フェザー級(Fe)  122ポンドを超え,
     126ポンド(57.15キロ)まで
 ヘビー級(H)  175ポンドを超え,無制限
 スーパー・フェザー級(SFe)  126ポンドを超え,
     130ポンド(58.97キロ)まで
   

 タイトルマッチでない試合でも,両選手のウェイト差は無制限に許されるわけではありません。あまりにも大きなウェイト差がある場合,危険が伴うためです。したがって,JBCでは許容される両選手のウェイト差を決めています(表3)。この表に定める最大のウェイト差を超える場合には,JBCから承認されない限りは試合を行うことが許可されません。
 両選手のウェイトが異なる区分にまたがる場合には,軽い方の区分に定められている最大ウェイト差が適用されます。つまり,A選手が”112ポンドまで”,B選手が”112ポンドを超えて118ポンドまで”の区分に属する場合には,A選手が属する”112ポンドまで”の区分に該当する3ポンドが両選手間に許容される最大のウェイト差となります。

表3. 許容される両選手間の最大ウェイト差(第52条)
ウェイト 最大ウェイト差
 112ポンドまでの場合 3ポンド
 112ポンドを超え,118ポンドまでの場合 4ポンド
 118ポンドを超え,126ポンドまでの場合 5ポンド
 126ポンドを超え,135ポンドまでの場合 6ポンド
 135ポンドを超え,147ポンドまでの場合 7ポンド
 147ポンドを超え,160ポンドまでの場合 8ポンド
 160ポンドを超え,175ポンドまでの場合 10ポンド
 175ポンドを超える場合 制限なし















 出場する全選手に計量の義務が課せられます(第59条)。試合前日の原則午後4時から午後8時の間にJBCが指定した場所に出向き,ウェイトが規定以下であるかどうかを検査するのです。事前にドクターの診断を受け,合格することが計量に臨める条件になっています(第60条)。
 両選手あるいは一方の選手がオーバーウェイトまたはウェイト不足となった場合には,2時間の猶予が与えられます。この間は何度でも計量が許されますが,それでもパスしない場合には失格となります(第60条)。
 タイトルマッチの場合,チャンピオンが失格すると自動的にタイトルは剥奪されます。詳細は第5章で説明することにします。
 タイトルマッチでない場合でも,試合は両選手が交わした契約ウェイトを上限としたウェイトで行われます。JBCの公式サイトに公開されている”試合組合せ表”には各試合の契約ウェイトが明記されているので,一度目を通して見ることをお勧めします。
 例えばS.Feと書いてあれば,その試合がスーパーフェザー級のリミットである130ポンドで契約されていることを示しています。また119ポンドとか54.0kgというように契約ウェイトそのものを明記してある試合もあります。
 契約ウェイトを守れなかった選手は違約金の支払やグラブハンデをつけるなどのペナルティを課せられます。グラブハンデとは相手よりも重いグラブをつけることです。

 かつては原則として”当日計量”が行われていました。夜の試合であれば,試合当日の午前10時に秤に乗るのです。しかし,これでは試合本番までに体力を回復させる時間的余裕がないために健康管理上の問題が大きいという理由で,1994年4月1日から”前日計量”に変更されました。
 なお,JBCは正規計量時刻の2時間前までに計量器を用意し,選手の要求に応じてJBC役員立会いのもとに予備計量を許可することがあります(第61条)。
 前日計量では体力回復の時間が長く取れるというメリットがありますが,試合本番における両者の実質的なウェイト差が大きくなってしまうというデメリットもあります。計量後は何をどれだけ飲み食いしても自由ですから,試合中にはウェイトオーバーになっているためです。『それでは前日に計量する意味がないのでは?』という疑問を持つ方もいると思いますが,ウエイトが増え過ぎれば体が重くなって動きに切れがなくなりますから,必ずしも有利とは言えません。それでもJBCは安全のために試合当日に再計量を指示することがあり,選手はその指示に従うことが義務付けられています(第59条)。 

 昔から減量や計量に纏わるエピソードには事欠きません。蓮台寺のキャンプで水道の蛇口に針金を巻かれてしまったファイティング原田が『勢い良く流れる水洗トイレの水を両手ですくって飲みたいという衝動に駆られた』と言ったことは有名です。これはボクシング漫画の最高傑作『あしたのジョー』における力石徹が過酷な減量に挑む場面のモチーフにもなっています。また関光徳の減量苦も有名で,しばしば幽鬼のような表情でリングに上がりました。
 1回目の計量でパスせず,炎天下に会場の周囲をランニングしたり,縄跳びによって出ない汗を絞ってパスしたというような話はよくあります。計量会場に縄跳びのロープ持参で出向くこと自体が変な話ですが・・・・・。入れ歯を外し,髪の毛を切って,最後は生まれたままの姿になって秤に乗った選手もいます。2度目の計量でパスしても,肉体的・精神的に微妙な影響が残ることは避けられません。
 スパイダー根本が敵地パナマに遠征してエルネスト・マルセル(パナマ)のWBA世界フェザー級王座に挑戦したときのこと。減量苦の王者が秤に乗って針の揺れが止まらないうちに役員がパスさせてしまい,ワーッとなだれ込んだマルセル陣営があれよあれよという間に水を飲ませてしまったという”事件”もありました。言葉が通じないため,足元を見られたのでしょう。

 どの選手も計量後の食事には減量以上に気を遣っているようです。厳しい減量が終わった開放感から水分を摂り過ぎて,せっかく作り上げたコンディションを崩してしまうこともあります。
 減量で弱った胃袋はそう簡単に食べ物を受け付けないでしょう。それでも私が計量会場で目撃して驚いたのは,パスした直後に水も飲まずに”どら焼き”を頬張っていたフィリピン人選手です。
 減量苦で有名だったファイティング原田は,よく計量直後の食事のために洋食レストランの老舗『たいめいけん』に立ち寄っていました。ここの創業者として知られる茂出木心護さん(故人)は減量で弱った原田の胃袋を気遣い,食前に少量の葡萄酒を飲ませてまずは食欲をそそることに腐心したそうです。郡司信夫さんが主宰していた『ガゼット座談会』は毎月”たいめいけん”で開催されていましたが,茂出木さんがそのエピソードを披露していたことがあります。


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